西京桂坂マンション建築計画の白紙撤回について
平成19年10月16日
株式会社日本エスコン
代表取締役 直江 啓文 殿
株式会社さくら不動産
代表取締役 川野 雅弘 殿
株式会社京阪都市設計
代表取締役 伊東 義通 殿
西京桂坂マンション建築計画の白紙撤回について(要請)
前略 貴下ますますのご清祥の段お慶び申し上げます。
株式会社日本エスコン、株式会社さくら不動産、株式会社京阪都市設計が建築しようとしている西京桂坂マンション計画について、桂坂学区の11自治会は、「建築計画白紙撤回の要請書」のとおり、マンション建設計画を白紙撤回されますよう申し入れます。
かえで自治会 会長 谷口あゆみ
さつき自治会 会長 宮島 義夫
しらかば自治会 副会長 塩見 善昭
あかしあ自治会 会長 鶴谷美貴子
けやき自治会 会長代理 小谷 理明
ひいらぎ自治会 会長 大下 典子
つばき自治会 会長 田中 守
くすのき自治会 会長 河合 行朗
にれのき自治会 会長 水谷 恵一
もみのき自治会 会長 小澤 正人
さくら自治会 会長 小迫 久男
建築計画白紙撤回の要請書
第1 桂坂地域
1 「桂坂」という地域
(1) 「桂坂」は京都市の洛西に位置する西京区にあり、大枝北沓掛町・御陵大枝山町・御陵峰ヶ堂町の3町で構成されている。
総面積は約163万㎡で、甲子園球場41個分、東京ドーム35個分の広さがあり、この地区に、世帯数約3300世帯、およそ11,000人の住民の暮らしが営まれている。
(2) 桂坂は、セゾングループに属する「株式会社西洋環境開発」によって開発が進められたが、その都市計画は、いかに住む人の生活を豊かにするか、という思想に裏付けられた質の高いきめ細かなものであった。開発にあたっては、まちづくりは単に人が住む器をつくればよいというものではない、美しく快適で居心地のいいまちという芸術作品をつくるのだ、という心意気で取り組まれた。
西洋環境開発の掲げるコンセプト(統一的な視点、考え方)は次のようなものである。
「自然と溶けあう心地よい暮らし」
「快適で安全な町づくり」
「人と自然がひとつになった桂坂の毎日」
「桂坂の新しい歴史と文化をはじめる」
このコンセプトを生かすために、桂坂の町は、ほぼ全域で2階建の1戸建住宅であることが求められ、植栽をして緑化することで美しい表情の町並みをつくりあげようとしたのである。
(3) 西洋環境開発は、昭和60年、第1期分譲を開始、昭和61年4月には第1号入居者があって、桂坂の町の新しい歴史がはじまった。
動脈となる交通網は、町の中心にロータリーを配し、ここから桂坂を周回する幹線道路が東西南北に延び、やがて網の目のように広がって各戸に至る。14に区割りされた区域のそれぞれには、近隣公園と自治会館が建設され、住む人のコミュニティーの場を提供している。
ロータリーの北には広大な「古墳公園」、東には展望の広がる「桂坂公園」が造成され、ロータリーから古墳公園を経て東へ進む道は「東海道自然歩道」に指定され、裏山の美しい竹林へとつながり、やがて西芳寺(苔寺)に至るのである。
ロータリーの西北方向には、近隣商業施設として、スーパーマーケット「イズミヤ」、「京都中央信用金庫」、「桂坂郵便局」があって、住民に利便を提供している。
ロータリーを北へ進むと、「桂坂小学校」「大枝中学校」等の教育施設、ユニークな研究で知られる「国際日本文化研究センター」、第三回京都市都市景観賞を受賞した「桂坂野鳥園」が見えて来る。
桂坂のまちの北側には「大枝山」をはじめ沓掛の山々が連なる。大枝山の北には、明智光秀が織田信長を急襲するために進軍したといわれる唐櫃越の間道が走る。野鳥公園より東側の山塊は「奥丸」、街道沿いの低い山は「天蓋」と呼称され、常に緑をたたえた稜線が人々の心を和ませる。
2 都市計画
(1) 桂坂地区の区域区分は「市街化区域」であり、用途地域は「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「近隣商業地域」の三つがあるが、そのほとんどは「第一種低層住居専用地域」に指定され、「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域」とされている。
(2) 景観保全に関しては、京都市景観眺望創生条例により、建造物修景地区の「山ろく型建造物修景地区」に指定され、「山すその緑豊か自然に調和した良好な町並みの景観の形成を必要とする区域とされている。
3 西京桂坂地区計画
(1) 京都市が決定した京都都市計画のうち、「西京桂坂地区計画」においては、「区域の整備・開発及び保全の方針」は次のとおり定められている。
ア 地区計画の目標
西京桂坂地区は、西京区の西山丘陵に位置し、現在、広域機能をあわせもつ良好な住宅地として、住宅団地の開発が進められている。周辺の自然環境と調和のとれた計画的で良好な居住環境の形成・誘導を図る。
イ 土地利用の方針
低層の住宅地を主体とした土地利用を図るとともに、地区内外の利便に供し、かつ、環境の魅力を高める公共公益施設等を配置する。
ウ 地区施設の整備方針
地区内には、幹線道路、補助幹線道路及び近隣公園を整備し、区画道路、児童公園については、コミュニティの形成を考慮して適正な配置を行い整備を図る。
エ 建築物等の整備方針
桂坂地区の住宅地区においては、低層住宅地として良好な居住環境を形成・誘導するため、用途の混在を防止し、適正な区画規模のもとに壁面後退等により空地を確保して緑化を図る。
第2 桂坂住民
1 桂坂誕生20年
昭和61年4月、桂坂に第1号の入居があって以来、20年の年月が経つ。今日では、約3,300世帯およそ11,000人の住民が居住する一大ニュータウンに成長した。桂坂は樹々の緑に、四季の花々に包まれ、落ち着いた表情を見せており、住民は安全でのびやかな日々の暮らしを満喫している。
2 住民の努力
桂坂が今日の美しいたたずまいを有しているのは、自然にそうなったというものではない。今ある桂坂の眺望景観は、一重に住民の力、不断の努力の結果であることを忘れてはならない。住民が景観を創生し維持してきた基本は「建築協定」と「自治会活動」にある。
3 建築協定
(1) 桂坂では、「美しい町の景観」を造ること、そしてこの景観を守り育てることをコンセプトとしてきた。
西洋環境開発は、桂坂に住む人にこれから桂坂に住もうとする人に、次のように述べて、町の案内をしてきた。
「建築協定・緑化協定で美しい町の景観を整えます。
桂坂では、いつも美しい町の景観が維持できるようきめ細やかな配慮をほどこしています。例えば「建築協定」。建築物の外壁を道路との境界から、1階は1.5メートル以上、2階は2.4メートル以上離すことにします。これだけでも2階建の圧迫感がなくなり、眺めも、風通しも、陽当たりも、はるかによくなります。このほか、屋根や外壁を落ち着いた色調にしたり、垣根には自然素材を取り入れたりするといったものです。また幹線道路沿いの家々では、通りに面して植えられた豊富な植栽が、いつも美しい表情を見せてくれるように、住む人ひとりひとりが、美しい景観を守っていこうと「緑化協定」も結ばれています。
それらがあいまって、桂坂では将来的にも美しい町並みを保ちつづけていくことでしょう。」
(2) このようなコンセプトの下で、桂坂では、宅地を購入するときに、建築協定を締結することが求められ、おのずと、自然と景観に対する意識が高められ、これを保持していく仕組みが形成されてきた。
その結果、桂坂地区では、協定地区が40を数え、京都市内における建築協定地区70のうち、その60%は桂坂地区が占めるという状態に及んでいる。そして、その区画数は3085を数えており、桂坂は、まさしく、全国有数の建築協定地区なのである。
桂坂の建築協定地区名と詳細図は別紙「桂坂地区建築協定一覧表」及び「西京桂坂地区計画の区域」のとおりである。
4 自治会の活動
(1) 建築協定の制度が整備されたといっても、実際に自然と景観を保持するためには、住む人々の不断の取り組みがなければ実現するものではない。そして、この努力を支えてきたのが、「自治会の活動」と「建築協定委員会の活動」である。
(2) 桂坂学区の自治会は14ある。それぞれの自治会は、近隣公園と自治会館を有するが、それらのリストは次のとおりである。
自治会名 隣接緑地 自治会館
① かえで自治会 かりん公園 かえで自治会館
② さつき自治会 天蓋公園 さつき自治会館
③ しらかば自治会 白樺公園 しらかば自治会館
④ はなみずき自治会 サンシティP・L はなみずき自治会館
⑤ あかしあ自治会 第4児童公園 あかしあ自治会館
⑥ ぽぷら自治会 三番館P・L ぽぷら自治会館
⑦ けやき自治会 山の辺公園 けやき自治会館
⑧ ひいらぎ自治会 香りの花公園 ひいらぎ自治会館
⑨ つばき自治会 プラザパーク つばき会館
⑩ くすのき自治会 桂坂公園 くすのき自治会館
⑪ あすなろ自治会 山の里公園 あすなろ自治会館
⑫ にれのき自治会 きさらぎ公園 にれの木自治会館
⑬ もみのき自治会 峰ヶ堂第2公園 もみの木自治会館
⑭ さくら自治会 細谷公園 さくら自治会館
(3) 各自治会においては、毎年役員と班長を選出し、少なくとも毎月1回は役員・班長会を開催し、各行事をこなすとともに、毎月1回はクリーンデーとして、近隣公園、自治会館、幹線道路、緑道植栽等の清掃、草抜き、枝打ちを行って美観を維持し、美しい風景の形成にこの20年間汗を流してきた。
5 建築協定委員会の活動
(1) 各自治会とは別組織にはなるのであるが、各自治会単位に、数名の建築協定委員が置かれ、会長、副会長、会計などの役職を決めて「建築協定委員会」を構成している。
建築協定委員は、協定の啓蒙、遵守、違反の監視、苦情の処理、更新手続などにあたり、建築協定制度の研究と維持に努めている。
(2) 桂坂地区では、各地区の建築協定委員会が、相互に連絡を取り合い、情報交換、普及啓蒙をおこない、地区計画制度や建築協定制度等の有効な活用を図り、良好な環境を維持増進することを目的として「桂坂地区建築協定懇談会」を設置し、定期的に会合を開いて情報を交換し、研鑽している。
第3 建築計画
1 ロータリーに幼児教室計画
桂坂の中央に位置するロータリーの東北に接して、3414,77㎡の宅地がある。所在地は「京都市西京区御陵大枝山町四丁目35番」で、桂坂が開発されて以来、今日まで20年間、空地のままで事実上緑地として存在してきた(以下、「本件土地」という。)。
この土地に、「有限会社京都幼児教室」が幼児教育施設を目的として建築物を予定し、平成18年9月29日、「都市計画法による開発行為の許可及び宅地造成等規制法に基づく宅地造成に関する工事の許可」(許可番号第751号)を得て、紅葉のころから工事に着手、平成19年2月にはほぼ終了したかにみえた。さてどのような施設が建築されるのかとみていたところ、いっこうに建物の建築工事に着手する気配がない。
2 ロータリーにマンション建築計画
そうこうするうちに、平成19年5月、本件土地には、幼児教育施設ではなくマンションが建設されるかもしれないという噂が住民の耳に入った。そんな馬鹿なことがあるはずがない、何かの間違いであろうと思われていたところ、「株式会社さくら不動産」が本件土地を取得し、「株式会社藤田建築設計事務所」が設計者となり、5階建マンションを建てる計画があるとの話が入ってきた。その後も、藤田建築設計が下りた、マンション業者が変った等の情報が交錯し、住民は混乱した。
3 お知らせ標識
平成19年7月20日、本件土地に「お知らせ標識」が設置され、「(仮称)京都西京桂坂マンション建築計画の概要」が告知され、はじめて、株式会社日本エスコン、株式会社さくら不動産が建築主となり、株式会社京阪都市設計が設計者となって、本件土地にマンション(以下、「桂坂マンション」という。)を建設する計画があることが明確になった。
4 建築計画の概要
(仮称)京都西京区桂坂マンションの建築計画の概要は次のとおりである。
敷地の地名・番地 京都市西京区御陵大枝山町四丁目35番
用 途 共同住宅
3,414.77㎡
2,018.85㎡
構 造 鉄筋コンクリート造
7,370.52㎡
(容積率対象外) 771.74㎡
15メートル
階 数 5階
棟 数 3棟
76戸
住所 東京都千代田区内幸町2丁目2番2号
富田生命ビル23階
氏名 株式会社日本エスコン
代表取締役 直江啓文
電話 (03)5512-7020
住所 大阪市中央区西心斎橋2-2-3
氏名 株式会社さくら不動産
代表取締役 川路雅弘
電話 (06)6212-3706
住所 京都市右京区西院坤町1番地
氏名 株式会社京阪都市設計
代表取締役 伊東義通
管理建築士 湯浅勝也
電話 (075)313-2266
住所 京都市中京区壬生賀陽御所町77-1
氏名 株式会社山庄
代表取締役 山内庄一郎
電話 (075)313-5800
未 定
平成20年1月31日
平成20年12月25日
平成19年7月20日
第4 まちづくりの破壊
1 地域性、場所性
(1) 5階建のマンションが京都市の繁華街の真中に建てられるというのであれば、それは、特段のことがなければ、問題とされる事柄ではないであろう。
しかし日本エスコン、さくら不動産が計画している建築物は、桂坂という地域であり、ロータリーの東北角地という場所である。
すなわち、低層住宅地として良好な居住環境を形成してきた桂坂という地域に、しかも桂坂の中心に存し、桂坂の顔とも、表玄関ともいわれるロータリーという場所に、中層共同住宅を建設するというのは、その地域性、その場所性から断じて許すことは出来ない、これが、住民がマンション建設に反対する理由であり根拠である。
(2) 本件土地は、都市計画法の用途地域は、「近隣商業地域」に指定されている。
近隣商業地域とは、「近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」とされている。
しかし、本件建築物は、いかなる商業を営む施設だというのであろうか、住民にいかなる利便を増進してくれるというのであろうか。単に多くの人々が集合して居住するというだけで、住民に利便性をもたらすどころか、後に述べるとおり害悪ばかりをもたらすものである。
マンション業者である日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計(以下、「日本エスコンら」という。)の言い分はただ1つ。用途地域の制限には、建ててはいけないという建築物に、「共同住宅」は入っていない、この1点のみである。
しかし、日本エスコンらのこの言い分は、「法の抜け穴」に入り込んで開き直っているものであって、桂坂の地区計画や建築協定の精神を考慮せず、法の趣旨を曲解し、事の本質を無視した質の悪い主張であるといわなければならない。桂坂センター地区E地区の地区計画において、建築物の整備方針には「商業・業務等の施設により魅力ある街区の形成」とあり、こうした地域の利便施設の整備を前提として「近隣商業地域」という用途地域に指定されているのであって、そうした施設でなく住宅が建つ場合は低層住宅とするのが西京桂坂地区計画全体の趣旨である。すなわち、桂坂のこの場所において、住居を建てようというときは、周辺と同じ「第一種低層住居専用地域」と取り扱われるべきであり、一種住専と同等の規制に従わなければならないというべきである。
そもそも、近隣商業施設を建築する場合であっても、周囲を第一種低層住居と公園に囲まれ、桂坂の顔であり、表玄関でもあるロータリーの周辺においては、建築する建物も、周辺の風景に調和したものが求められるのであって、容量一杯の建築が許されるものではない。
京都幼児教室が計画していた幼児教育施設は2階建であった。現に建築されている商業施設をみても、スーパー「イズミヤ」は平家建、「桂坂郵便局」も平家建、「京都中央信用金庫」は2階建にとどめ、周辺に配慮して調和を心掛けた建物を建てている。
以上の観点から、日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計のグループが、この地に、2階建、10mを超える建築物を建設することは実質的に違法であると評価されなければならない。
2 眺望阻害・景観破壊
(1) ロータリーの周辺について観望すれば、現在は、本件土地は何にもない草地のままであり、北には古墳公園の、東には桂坂公園の樹々の緑が開け、その奥には、沓掛の山々の稜線が広がり、澄んだ青空が続いている。
この場所に、5階建マンションが建築されるということになれば、桂坂をロータリーまで登ってきたとき、15メートルの鉄筋コンクリートで造られた壁が立ち塞がるという情景が出現することになる。壁面は道路に接するかのように立ち上がり、圧迫感をもたらすとともに、公園の緑を遮り、山々の稜線を立ち切る。マンションは敷地一杯に建てられるので、横にも広がり、視界を隔てる。そして、ロータリーは桂坂の中心であるだけに、東西南北からここに集まってまた散っていくたくさんの人々は厭でも毎日この障害物が目に飛び込んで来るのを避けられないのである。
このような眺望阻害、景観破壊は、20年間桂坂を創り守り育ててきた住民にとって、悲しく、悔しく、理不尽でとうてい納得のできるものではない。
(2) 景観は国民の共有財産であり、公共財産である。各地の景観はその地の住民の共有財産である。景観は土地の連鎖の上に成り立つものであるから、景観の共有は、土地の地権者(所有者、賃借者、占有者)との関係で、とくに強い結びつきを持つ。すなわち、景観はこれを共有する一定範囲の地域内の地権者が求める共存と共有のルールや不文律や慣習によって規制されるべき本質を有するのである。桂坂の場合には、桂坂学区に土地建物を所有する者、賃借する者、そして居住する者が一義的には景観を共有する者であり、その保全、維持、管理については、桂坂の住民の意思が最大限に尊重されなければならない。
3 建築協定
(1) 桂坂地区では、協定地区が40数え、その区画数は3085に及び、ほぼ全域に近い区域が包摂されている。
この建築協定の一例として、「京都市西京区桂坂第4地区建築協定書」をみてみると次のような記述がある(抜粋)。
ア 建築物の敷地等は次の各号に定める基準に適合しなければならない。
(ア) 建築物の敷地面積は、160平方メートル以上でなければならない。
(イ) 1区画につき1住宅としなければならない。
イ 建築物の位置等は、次の各号に定める基準に適合しなければならない。
(ア) 建築物の外壁仕上面の道路(緑道を含む。)境界線からの後退距離は、1階については1.5メートル以上、2階については2.4メートル以上としなければならない。
(イ) 建築物の外壁仕上の隣地境界線からの後退距離は1.2メートル以上としなければならない。
ウ 建築物の用途、形態等は、次の各号に定める基準に適合しなければならない。
(ア) 次のaからdまで掲げる建築物以外の建築物は建築してはならない。
a.1戸建て専用住宅
b.診療所(獣医院を除く。)
c.巡査派出所、公衆電話所その他これらに類する建築基準法施行令第130条の4で定める公益上必要な建築物
d.イからハまでに掲げる建築物に附属するもの
(イ) 階数は地階を除き2以下とする。
(ウ) 建築物の最高の高さは10メートル、最高の軒の高さは7メートルを超えてはならない。
(エ) 建築面積は敷地面積の10分の5を超えないこと。
(オ) 建築物の延面積は敷地面積の10分の8を超えないこと。
(カ) 屋根の勾配は10分の3以上とすること。
(2) この建築協定の内容を本件土地に適用してみると、その違いは歴然としている。
本件マンションの敷地面積は3414㎡であるから、1区画160㎡以上の規制を適用すると、敷地一杯に住宅ばかり建てるとしても21戸、道路を取ればもっと少ない戸数しか建たないのであって、76戸という住戸数はあまりに多く、建物の規模が大き過ぎる。
建築物の高さ15メートル、階数5階、道路後退線等も、建築協定内容と大幅な隔たりがあり、周辺の地域と全く調和しないものである。
4 交通障害
(1) 本件土地の西側に隣接して水路が存しており、その用地(京都市西京区御陵大枝山町4丁目200番地の5の一部・以下「本件水路」という。)は京都市に帰属し、市が管理している。
この水路を渡るために通路橋が必要であるとして、京都幼児教室が占用橋を新築したが、本件用地に出入りするためには本件占用橋を通るしかない。
しかし、戸数76戸の住人、その車両、出入業者とその車両が、この1本の占用橋だけを利用するということになれば、混乱し、渋滞し、様々な交通障害を引き起こすことが避けられない。橋の幅は狭く、2台が1度に擦れ違って渡ることは出来ない。マンション敷地から出ようとする車があれば、入ろうとする車は止まって待つしかない。入ろうとする車があれば、出ようとする車は止まっているしかない。必然、道路に、敷地内に渋滞が生じる。
道路から右折して本件土地に入ろうとする車があれば、対向車がなくなるまでとどまらざるをえず、たちまち後続車がロータリー内に連なり渋滞を引き起こす。ロータリー内に渋滞が生じると、東西南北の幹線道路からロータリーに進入することが出来ず、すべての道路に渋滞が生じる。
しかも、橋がロータリーまで12mと極めて近接しており、バス1台がロータリーの手前で停車しただけで、橋の出入りは不可能になる。橋の前を通るバスの頻度は非常に多く、度重なる停滞が運転手の無理な操作に結びつき、交通事故に連なる危険が高い。ちなみに、京都市バス、京阪京都交通、ヤサカ自動車などの路線バスだけで、ロータリーを通る車両は1日400本を越える。
そして、イズミヤの出入口にも近く、道路はカーブしている、という状況下においては、占用橋出入りの際に交通事故の危険が増大し、ロータリー進入道路の、またロータリー内の交通渋滞と混乱が生じることは明白である。
(2) ロータリーの西方向には、スーパー「イズミヤ」、金融機関「京都中央信用金庫」「郵便局」、診療所があり、北方向には、教育研究機関「日文研」「桂坂中学校」「桂坂小学校」、保育所、幼稚園がある。ここよりさらに西へ進むと、洛西ふれあいの里「療護園」「更生園」「授産園」があり、社会福祉法人洛西福祉会「特別養護老人ホーム」「デイサービス」「沓掛寮」、さらに「京都市西養護学校」がある。このため、救急車が搬出入することも多い。
ロータリーを西へ走ると、国道9号線に出て「老ノ坂」「亀岡」に至る。ロータリーを東へ進むと、京都大学桂坂キャンパスに入り、御陵坂を越えて国道9号線に至る。ロータリーは桂坂を通過する車の要でもあるのだ。
このように、このロータリーは桂坂住民のあるいは桂坂外の住民の、通学、通勤、通院、金融、買物、散策の最も重要な径路に当たっており、朝夕にはたくさんの生徒、学生、通勤者、通院者、路線バス、送迎バス、事業車両、マイカーが集中するのであって、危険が増幅するとともに、今まで、住民らが享受してきたロータリーのおだやかな落ち着いたたたずまいと風景が失われることは必至である。
5 6000人の反対署名
(1) 桂坂学区の住民は、マンション業者によって、眺望景観が破壊され、住環境が侵害されるのは許し難いとして、反対署名活動を始めた。
反対署名の内容はつぎのとおりである。
桂坂マンション建設反対声明
私たち桂坂の住民は京都市西京区御陵大枝山町4丁目35番(本件用地)に建設が計画されている5階建桂坂マンションの建設に絶対反対します。
本件用地に中高層集合住宅を建設することは、住民の眺望権(眺望利益)、景観権(景観利益)、住環境権を侵害するもので許されません。
1 本件用地に住宅が建設される場合には、用途地域を「第一種低層住宅専用地域」とすること。
2 マンション建設業者と建築設計事務所は、本件用地における5階建マンション建築計画を白紙撤回すること。
3 本件用地に住宅を建設する場合は一戸建て住宅とすること。
(2) 平成19年9月28日現在、反対署名の数は6000人を超えた。有権者数が8000人といわれる中、その80%近くが反対の意思を表明しており、世帯単位で計算すれば90%を超えていることは間違いない。
これだけ多くの桂坂住民が、本件桂坂マンションの建設に反対していることを、日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計は真摯に受け止めて適切な対応をすることが求められている。
(3) 景観の評価は難しいといわれている。同じ建物をみても、景観を破壊しているという人と、そうでないという人があり、人により、立場により異なる。
景観破壊の有無程度(裏返せば景観利益の有無程度)は、最終的には裁判所、それまでは行政庁が判断するというのが、現在の法体系の下での一応の考え方であろう。しかし、裁判所や行政庁は何を拠り所にして景観を判断するのであろうか。結局のところ、その地域、その地区に住む人々の意識と意思を第一義とするしかないのである。
景観を共有する桂坂の住民がどう受け止め、どう考えているかということが、景観を考えるにあたって、最も重視されるべきなのである。
(4) また、景観のみならず、京都市の定めた桂坂地区計画では「自然環境との調和」、「コミュニテイの形成」、「用途の混在防止」等の方針が示されており、住宅にする場合は当該地区の周辺全域を占める既存低層住宅との調和を図ることが重要で、日本エスコンらの5階建てマンションは全くこれになじまない。
桂坂住民が、2階建、10mを越える建物は許さない、5階建のマンション建設は絶対反対するとして、反対署名をしていることは、桂坂地区計画に合致した当然の要求なのである。
6 不法行為
(1) 景観の恵沢を享受する利益すなわち「景観利益」が、法律上保護される利益であることは判例上確立している。そしてこの景観利益に対する侵害に対しては、妨害予防、妨害排除、損害賠償を請求する権利があることも認められている。
最高裁判所 平成18年3月30日判決(国立景観訴訟上告審)
東京地方裁判所 平成14年12月18日判決(国立景観訴訟第一審)
東京地方裁判所 平成18年12月8日判決(隅田川花火観望訴訟第一審)
(2) 建物の建築が第三者に対する関係において景観利益の違法な侵害となるかどうかは、被侵害利益である景観利益の性質と内容、当該景観の所在地の地域環境、侵害行為の態様、程度、侵害の経過等を総合的に考察して判断すべきである、とされている。
(3) 日本エスコン、さくら不動産は、ロータリー東北角の本件土地に、マンションを建ててはいけないとは書いてないという「抜け穴」に目をつけ、土地を購入し、5階建の建築物を建てようとしている。そして、周辺の眺望景観や桂坂のまちづくりに何ら配慮しようとしていない。
しかし、さくら不動産らは、周辺の環境はどういうものかについてそれなりに調査していたに違いない。桂坂では美しい景観が保持され、沿道には街路樹が立ち並び、2階建の甍が連なる落ち着いた町並みを日々目の当たりできる。ここにマンションを建てれば、広がる眺望と美しい景観を第一のセールスポイントとすることができる。眺望と景観の付与価値があれば、マンションは高く売ることができる。さくら不動産らはこのように考えたに相違ない。
(4) さくら不動産らは、本件土地にマンションを建築することにより、桂坂住民のまちづくりの成果にタダ乗りし、美しい眺望景観という付加価値をタダ喰いしてマンションを売却し、儲かった利益を喰い逃げして、はい、さようならと売り逃げしようとしている。後に残った、景観破壊、交通障害、住環境の悪化などの諸問題はマンションを売りつけた住人に押し付けスタコラサッサ、もう私らは関係ありません。「タダ乗り」「タダ喰い」「喰い逃げ」「売り逃げ」、桂坂住民は、このような理不尽なことを決して許すことは出来ない。
(5) 日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計のこのような行為は「企業倫理」に反するものであり、企業の「社会的責任」に背くものであり、企業の「環境配慮義務」に違反するものである。
いかに、企業に財産権、土地利用権があるとしても、日本エスコンらがこれまで行い、これから行っていこうとする一連の行為は、開発権の乱用であるといわなければならない、そして、桂坂住民の20年のまちづくりの成果を奪い、景観利益を侵害する違法な行為、良好な住環境を侵害する違法な行為、すなわち「不法行為」であるといわなければならない。
第5 事業者
1 桂坂マンションを巡る動き
(1) 桂坂マンションを巡っては、平成19年につぎのような動きがある。
5月初旬 住民の間に本件土地にマンションが建つとの噂が流れる。
5月31日 「さくら不動産」が本件土地について所有権移転登記経由。
6月 3日 「桂坂マンション対策会議」設立。署名運動開始。
6月中旬 「藤田建築設計」が下りた、事業主が変わるらしいとの噂が流れる。
7月20日 「お知らせ標識」設置。
事業主「日本エスコン」「さくら不動産」、設計者「京阪都市設計」、事業主代理「山庄」
8月 4日 住民説明会。住民600人参集。
9月11日 日本エスコンら、ボーリング調査のため現地へ。住民が反対、調査は中止。
9月18日 「山庄」事業主代理辞任。
9月25日 日本エスコンら、再度ボーリング調査のため現地へ。この日も住民が反対、調査は中止。
9月28日 桂坂住民130人、京都市訪問、田中守会長が福島貞道景観創生監に「6000人の反対署名」提出。
(2) 桂坂マンションを巡る動きを見てみると、平成19年春、「さくら不動産」が本件土地を購入し、5階建マンション建設を計画し、「藤田建築設計事務所」に設計を依頼して進めていたようである。しかし、さくら不動産は、京都におけるマンション建設については経験が浅いので、実績のある「日本エスコン」に提携話を持ちかけ、両社共同して桂坂マンション建築計画に取り組むこととした。
こうして日本エスコンとさくら不動産は本格的取り組みに入ったのであるが、その過程で、なぜか藤田建築設計が下りてしまう。
推測の域を出ないのであるが、エスコン、さくらが、桂坂の住民の反対運動等はものともせず、遮二無二に強引に事を進めようとする姿勢と意見が合わず、藤田建築設計は退いたのではなかろうか。
(3) 8月4日の全体住民説明会には、600人の住民が集まった。2時間に及ぶ説明会で、次から次へと反対意見が続き、事業主側は桂坂地区の強固な反対意思を知ったはずだ。
しかし、この住民説明会では、眺望景観、住環境、桂坂地区計画との整合性、交通障害など重要な論点について、業者側の説明はほとんどなされていない。住民の質疑にも答えていない。そこで、住民は、日本エスコンらに第2回全体住民説明会の開催を何度も申し入れているが、梨のつぶてで応じようとしない。
(4) そうこうするうち、日本エスコンらは9月11日、突如、地質調査のためと称してボーリング調査に来る。住民100人が集まって抗議、その日は引き揚げたものの、9月25日、再びボーリング調査に来る。
まさしく、業者は、桂坂住民の意思など眼中になく、遮二無二に強引に突破してマンション建設を強行しようとしているのである。
そして、9月18日、事業主代理であった株式会社山庄は、日本エスコンらのやり方には、とてもついていけないとして辞任してしまう。
こうして、事業主側の身内からも離脱者を出していくような強引な姿勢について、日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計は反省して見直すべきではないだろうか。
2 事業者の責務
事業者はまちづくりや景観に関して様々の責務を負っている。
(1) 「景観法」第5条には、事業者の責務として次のとおり定められている。
「事業者は、基本理念にのっとり、土地の利用等の事業活動に関し、良好な景観の形成に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力しなければならない。」
(2) 「京都市眺望景観創生条例」第4条には、市民及び事業者の責務として次のとおり定められている。
「市民及び事業者は、第2条に定める基本理念にのっとり、自らが京都の優れた眺望景観を創生する主体であることを理解するとともに、それぞれの立場から、その創生に努めなければならない。」
(3) 「京都市土地利用の調整に係るまちづくりに関する条例」第4条には、事業者の責務として次のとおり定められている。
「事業者は、良好なまちづくりを推進するため、開発事業を行うに当たっては、その内容をまちづくりの方針に適合させるよう努めるとともに、自らも地域社会の一員であることを自覚し、市民と共にまちづくりの課題の解決に努めなければならない。」
(4) 「京都市中高層建築物等の建築等に係る住環境の保全及び形成に関する条例」第5条には、建築主等の責務として次のとおり定められている。
「中高層建築物等の建築主等(中高層建築物等の建築等を行う建築主等をいう。以下同じ。)は、当該中高層建築物等の設計及び施工に当たっては、周辺の住環境に十分配慮し、安全で快適な住環境の保全及び形成に努めなければならない。」
(5) 日本エスコンらは、都市開発を行う事業者であるが、現代社会の一員であり、私たちが生きる環境に対する社会的義務、すなわち「環境配慮義務」がある。このことはいくつもの法律、条例によっても定められているものであって、日本エスコンらは「事業者の責務」を十分自覚すべきである。
3 日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計に対する要請
(1) 桂坂住民は、日本エスコンらが、自ら取った企業行動が誤ったことを気づくべきであると考える。
さくら不動産は、自社が利益を得ることばかりに目を奪われ、マンション建設が、桂坂の地域に、桂坂の住民に多大の損害を及ぼすことに思いを至さず、本件土地を買った。しかし、単独で業務を遂行することに力不足を感じ、他社に儲け話を持ち込み、日本エスコン、京阪都市設計がこれに乗った。
「デューデリジェンス」という言葉がある。その意味は、不動産に投資したり、事業に投資する際には、果たして本当に適切な投資なのか、また投資する価値があるのかを判断するため、事前に詳細に調査を行うということであり、今やどこの企業でも取り入れている手法である。
さくら不動産らは、このデューデリジェンスを誤ったと考える。
(2) 「過ちをあらたむるに憚ることなかれ」という諺がある。進むにあたって、折々に周囲や足もとを見直して進路を確認し、過ちを見つけたら軌道修正することは恥ずべきことではないという教えである。
今、日本エスコンらは、桂坂住民の6000人の署名という圧倒的な反対署名に抗って、なおも建築計画を押し進めようとしている。そしてボーリング調査を強行しようとしている。
ここで、一旦立ち止まらなければ、今までの出費に加えて、ボーリング調査費が必要となり、さらに設計費、材料費、工事費等の出費がかさんで、後に引けなくなってしまうであろう。ここは、一度立ち止まって、計画を見直す絶好の時機なのではないだろうか。
(3) 桂坂住民は、日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計に対し、現在の桂坂マンション建設計画を白紙撤回されることを要請する。そして、今進めている開発行為の許可申請や建築確認申請の手続、事前協議など5階建マンション建設に対する一切の行為を中止されることを要請する。
そのうえで、本件土地の利用について、桂坂住民と協議のうえ、桂坂地域、桂坂地区、ロータリーという場所にふさわしいプランを作り直すことを要請する。
桂坂住民は、日本エスコン、さくら不動産、京阪都市設計がこのような姿勢に転換するのであれば、本件土地の利用について全面的に協力する用意があることを申し添えたい。














